恋人という名のゲーム


言われたお店に入ると、盛り上げ役で話の中心になっていたあゆがすぐに気づいて手を振ってきた。話が中断されて、自然と注目が集まる。

「美咲、おつかれー」


声をかけてきたあゆとは違って、ほかからあきらかに冷ややかな視線が集まるのを感じた。遅れてきて目立とうとか古いから、ていうかんじの目。好きで遅れてきたわけじゃないし、好きでここ来たわけじゃないし。

「先始めちゃったから、自己紹介も終わっちゃったの。はい、美咲あいさつして」

あゆは自分の隣の席にわたしを促しながら、とんでもなく無神経に言い放つ。この空気はきつい。だけど経験上、あゆがどうにかしてくれないのはわかっている。


「…えと、藤堂(とうどう)美咲です。遅れてすみません」

どうせ人数合わせで来ただけで、今日が過ぎればもう会うことのない人たちだ。いさぎよく頭を下げて席に着いた。
< 3 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop