恋人という名のゲーム
「飲み物、なくなりそうだね。なんか頼もうか?」

「じゃあ、ウーロン茶を…」

「もう飲まないの? アルコール弱い?」

「強くはないです。久しぶりだし、もうやめとこうかなって」

ふうん、と言って、久我さんは通りがかりの店員を呼びとめて注文をしてくれた。


少しして店員が持ってきたのは、ウーロン茶ではなかった。鮮やかな色の飲み物に首を傾げると、久我さんは苦笑した。

「ごめんね、勝手にノンアルコールカクテル頼んじゃった。ゆずサワー飲んでたから、こういうの好きかと思って。せっかくだから」

「ありがとうございます」

一口飲んでみると、甘酸っぱい味が口に広がっておいしかった。かなり好きな味だった。実はウーロン茶はあまり好きじゃないから、少し嬉しい。


「藤堂さん、人数合わせでしょ?」

「わかりますか?」

「わかるよ、ほかの子と雰囲気がちょっと違うし。俺も人数合わせだし」

爽やかに久我さんが笑う。久我さんはとても紳士的な人だった。共通点のない私たちを、とりとめのない話題で繋いでくれる。私の飲み物がなくなる頃には新しいものを頼んでくれている。そつのないスマートさに感心してしまう。
人数合わせの私なら面倒事もないだろうと思って話相手に選んだのだろうけど、合コンでこんなレベルの高い人と話しているのが信じられない気持ちになる。
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