十三日間
八日目 「僕」
「ああああああっっっっっ! うわっあっっっっっっっ!」

いつになく激しく、僕は叫び声をあげて飛び起きた。
悲鳴に近い声。

隣の部屋から、兄さんが飛んできて、部屋に飛び込んできた。
「伶! 伶っ!」
そう言うと、まだ悲鳴をあげている僕の肩を掴んで揺さぶった。
「落ち着け、大丈夫だ、大丈夫だから!」
そう言いながら、僕を抱き締める。

兄さんに抱き締められるなんて、一体何年ぶりだろう?

頭の中が真っ白になったまま、悲鳴だけを上げ続けていた僕は、その感触に落ち着いてきた。
僕よりずっと大きな身体。
一見、細くて頼りなさそうにも見えるのに、僕を抱き締める身体は大きくて、力強かった。

守られている感じがして、僕は身体の力を抜いていった。

「伶ちゃん! 伶、大丈夫なのっ!?」
遅れて母さんも部屋に飛び込んでくる。
手には朝飯の準備をしていたのだろう、フライ返しを持ったままだった。
「大丈夫みたいだ、伶の奴、また夢を見たらしくて…もう落ち着いたよな?」
兄さんの声に、僕は頷く。
それでも母さんは、僕の傍らに来て、額に手を当てた。
「熱はないわね。すごい汗…」
母さんの手は、水仕事をしてたせいか、冷たくて気持ちが良かった。

触れられた額の手から、暖かい物が流れ込んでくるようだった。
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