十三日間
学校に着く前に、途中の道で秀悟に逢った。
「おはよう」
「っす」
挨拶したまま、しばらく黙って並んで歩く…。
やっぱり、我慢できなくなったのは僕の方だった。
「何で昨日のこと、聞いてくれないんだよぉっ」
ふくれながらそう言うと、とたんに秀悟は笑い出した。
「あははは! 絶対おまえの方から話し出すと思ったからさ! 一昨日あんなに付き合ってやったんだ、カワイイ意地悪くらい、いいだろう?」
さらに笑いながら僕の顔をのぞき込み、足が止まる。
「伶…おまえ…」
襟首を捕まれる。
「な、な、なに?」
僕は怒られるのかと思って、びくっとしてしまった。
秀悟は、僕には当然手を出したりしないが、怒らせるとかなりコワイ人で有名なんだ。
ちなみに、腕っぷしの方もかなりたつ。
もうひとつ付け加えると、僕はそういうのは全然ダメ。
…僕の方が、普通なんだからね。

「これ、まさか昨日買ったのか?」
襟首を掴んで、秀悟は僕の胸元をのぞき込んでいたんだった。
「あ、あぁ」
なぁんだ、
それを見てたのか。

僕はホッとした反面、秀悟を驚かせたことに、内心やった!と小躍りしていた。

「ううん、僕が買ったんじゃないけどね」
へへへん、と得意そうに言うと、秀悟が横目で睨む。
「大木に買って貰ったってか? 何で初デートで女の子に買わせてるんだよ」
あきれた顔で秀悟が言う。

ふはははは、さすがの秀悟も、昨日の流れまでは想像つくまい!

僕はさらに得意顔になった。
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