十三日間

表向き、俺は一流企業の社員として生活することになる。

周りは、普通に生活する普通の会社員ばかり。
仕事が終われば、家族の待つ家庭に帰る者もあれば、デートに向かう者もいる。
一人暮らしが寂しくて、毎晩の様に飲みに行く者。
仕事を生き甲斐にし、深夜遅くまで会社に残って働く者…。

そこには、俺が今まで知らなかった、ごく普通の生活が満ちあふれていた。

その会社には、勿論俺の正体を知るものはいない。
俺は、なるべく目立たないように、ごく普通の社員を演じることに、最初はひどく苦労した。

優秀すぎてもいけない。
出来ないヤツだと思われては困る。

まわりの様子を伺いつつ、その中間に位置するように、俺は気を配りながら生活することになる。