十三日間
僕は一日、この考えに憑かれていた。
朦朧としたまま、気付いたら放課後だった、という感じだ。

みくるちゃんとの楽しいはずの会話も、きっとずっと上の空だったに違いない。

秀悟だって、僕の異変に気付いていただろう。

部室で着替えようとしていた俺の肩を、強く掴んだ。
「いたっ。何だよ?」
ぶっきらぼうに言う。
今日の僕は、愛想なしだ。

昨日、あんなに幸福感に包まれていたのが、うそのようだ。
「何があったのか、おまえが言わなきゃ俺には判んねぇよ。でも、言いたくないならムリには聞かねぇ。けど、言わないなら、黙ったまま解決しろよ、自分で」
僕を睨んだまま、まくしたてる。
「とりあえず、今日の部活は必死にやれ。疲れて何も考える気がなくなるくらいまで、へとへとになるまで、やれよ」
そう言うと、さっさとグローブを抱えて歩いていってしまった。

…ごめん…

…でもって、ありがとう…

自分でもどうすればいいか判らなかったもやもやが、秀悟の言葉で晴れていく。

うん、とにかく、身体を動かそう!
大好きな野球に打ち込むことで、その間くらい、ヘンな考えを追い出さなくちゃ!

僕は、自分のグローブをひっつかむと、秀悟の後について走り出した。
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