十三日間
「何にする?」
購買の自販機の前で、かっこつける僕。
た、たかがジュースだけどね。

「んと、じゃぁねぇ…これ」
大木みくるが指さしたのはミルクティーだった。
お金を入れて、ボタンを押す。
取り出したペットボトルを彼女に手渡して、僕は自分もお茶を買った。
「ありがとっ」
また、にこっと笑って歩き出す。
「いや、お礼がこれだけじゃ何だし…。あのさ、もし土曜か日曜、予定がなかったら、映画でも見に行かない? それこそ、おごるからさ」

うわ、うわ、うわ、心の準備もしてないのに、勢いで誘っちゃったよ!
どうしちゃったんだ、僕!

「え、それは悪いよ~! あれ、そんなに高くないもん」
「映画、やだった?」
「え…。映画はやじゃない…よ…」
「……」

あ、ダメだ、ここで沈黙しちゃいけないっ!
何か、スマートに誘う作戦もたてておくべきだったああ!

「じゃぁさ、映画は割り勘で。昼にマックでもおごる! どう?」
「え……っと……」

なに、何で悩むのかな?
僕と行くのがダメってことかな?
ツーショットがイヤなら、無理矢理秀悟たち誘うか?
そう持ちかけるべき??

「…うん、いいよ。ありがとう」
「!!」

え?
え??
ええっ???

それはおっけぇって事ですかい?

「ホント? 土日、どっちがいい??」
「土曜は友達と買い物行く予定だから、日曜がいいな」
「おっけ。…んじゃさ、待ち合わせの時間とか、また連絡とりたいし……メアド交換しない?」

そうなんだよ、実は僕、彼女の携帯番号もメアドも知らないのさ。
ここで教えて貰ったら、すごい前進じゃない?

「いいよ。お昼食べながらね」

しまった、もう教室に着いちゃった…。
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