十三日間
あれは、俺がいくつになった時の事だったのだろう?
自分の正確な歳は判らないから、その時も何歳だったかは判らない。

目つきの鋭いオヤジどもが、何人かがかりで俺をそこから攫って行ったんだ。
人攫いは、日常茶飯事だ。
どこにも属さない俺が居なくなったところで、誰も不審にも心配にも思わない。
そうやって、俺は産まれ育ったところから引き離された。

…永遠に。

俺が育った場所がどこなのか、調べようがない。
俺を攫った連中だって、あちこちから同じようなガキどもを手当たり次第に攫って来ていたから、俺をどこで攫ったか、なんて特定できないに違いない。
だから、俺は、自分が産まれ育った場所が何処なのか、知るすべはなかった。

…どうでもいい事だ。

どこで産まれ育ったか、なんて、これから生きていく上でこれっぽっちも必要な事じゃない。
必要なのは、これからどうやって生き延びるか、だ。

だが俺にとっては、奴らに攫われたのは幸運だったようだ。

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