十三日間
俺たちのような教養のないガキを、一から育て上げようなんて、コスト的にも見合わない気がするだろうが、実際はそんな事もない。
俺たちは、最低限の生活さえ保障されれば、それで満足するからだ。
すなわち、飢え死にしない程度の食い物。
凍死したり、熱射病などに倒れたりしない程度の寒暖の住居。
雨露をしのげる寝床。
それさえあれば、死にはしない。

実際、俺たちが生活していた場所は、かなりひどいものだったと思う。
…普通の奴らに比べて、だが。
ガキ一人が横たわるのにぎりぎりのスペース。
それが一人一人に割り当てられた居住空間。
1日2食、飲み物とわずかな食べ物。
飢え死にはしないが、満腹にはほど遠い。
衣服は最初に渡された着替えが、ぼろぼろになったらようやく交換してもらえる。
風呂は、週に一度入れるかどうか。

…それでも、俺を含め、集められたガキどもにとって、ここは天国にも等しかった。

今日の食い物の心配をしなくていい。
寝る場所を探して彷徨うこともない。
眠っている内に襲われないか、警戒しながらまどろむだけの眠りじゃない。

だから、俺たちを攫った連中と俺たちには、利害の一致があったわけだ。
奴らは、安い投資で、望む人材育成が出来る。
俺たちは、命の保障をされる代わりに、奴らの望む様に育て上げられる。
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