十三日間
六日目 「俺」
「……うぅうう………うぅっっ!」

強くうなされた訳ではなかったので、半分夢の中にいるような感覚のまま、俺は眼を開けた。

昨日より、いっそう強く甘い香りがする。

どこから漂ってくるのか、突き止めることはもう諦めた。
俺を包み込んでいるようにしか思えない。
…まるで、俺自身がその匂いを発しているかのように。

自分の考えに、笑ってしまいそうになる。

すぐに消えてしまうのは判っているので、俺は身動きをせず、香りが消えてしまうまで、その香りを楽しむことにした。

殺風景な部屋。
染みついたいろんな匂い。

その全てを忘れさせるような、幸福感を味わわせてくれる香り。
少しでも、それを楽しんでいたかった。

昨日よりも強く、長く、その香りはしていたが、だがやがて、消えてしまった。





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