囚われジョーカー【完】
三浦さんという存在を手放せないくせに、離れて楽になることを望む矛盾だらけの馬鹿な女。
「好き」
たったその一言が言えずに苦しむ、悲劇のヒロインぶる滑稽な女。
――――…三浦さん
好きです。
でも、その思いを抱いていくことが辛いんです。
こんな事になるなら、出逢わなければ良かった。
こんな思いをするなら、恋慕が募る前に関係を断ち切れば良かった。
「(深く関わらないようにしてたのに、な…)」
何時の間にか戻れない所まで来ていたのかもしれない。
と。
ポケットに小さな振動を感じ、お手洗いに行くふりをして二つ折りのそれを開いた。
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開く前に何となく予想は出来たんだ。昨日の今日だし、あの人のことだから釘を指すように連絡を寄越してくる筈だと。