囚われジョーカー【完】
「いらっしゃいませー。」
語尾をのばす形で気怠げな声を発する私は、こういう接客業は向いてないと思う。
勿論、叔父さんにそれを伝える努力はしたけどまったくの無視だ。
と。
銀のおぼんに食器を重ね、それを厨房へと運び。改めて来客の姿を瞳に映した私は息をのんだ。
あの人を、初めて見たときの感想は「怖い」だ。
その怖いは、顔もそうだけど彼の纏っている雰囲気が中性的で上品で綺麗すぎるからだと思う。
まあ、彼の性格を知ってしまえば人は外見だけでは計り知れないと思うだろう。これは絶対。
「うわ、おー…」
何時の間にか私の隣に立っていたらしい明日香さん。その口から出てきたのは引きつった笑みを含ませた好奇な声。
「…2名様ですか。」
「はい。」
優しく微笑んだのは怖い人ではない方の、柔和な雰囲気が似合っている若干胡散臭い笑顔を浮かべた男性。