囚われジョーカー【完】
最後の最後まで誤魔化していく気でいるのか、三浦さんはちばけてばかりだ。
「…三浦さん。」
「んー?」
深呼吸を小さく繰り返し。私は静かに冷静を装ったまま三浦さんに声を投げた。
「…お話が、あるんです。」
「……、」
「聞かないなんて、言わないで下さいね。」
一応、釘をさしておくことを忘れない。三浦さんならさっきみたいに聞きたくないと取り次がない可能性もあるからだ。
今回も、暫く苦い顔で考え込んだ三浦さんは。思い出したように煙草を灰皿に押し付け火を消すと。
「…分かった。」
「…、」
「明日、俺の部屋に来て。」
「三浦さんの、部屋…ですか?」
ああ、と頷く三浦さんに分かりましたと呟いた私は淹れたてのコーヒーをマグに注ぎ。優しく息を吹きかけた。
ブラックの苦味と豆を焼いた芳ばしい香りを一緒に喉に流し込む。
火傷したような気がするけど、そんなんはどうでもよかった。
―――――おそらく
明日、三浦さんとの関係が一気に終幕へと向かい始める。
幸せのゴールとは、いかないだろう。