囚われジョーカー【完】
と。
「篠宮、これ…」
清水くんは私に向かって右手を差し出しているのだが。視線を空へと泳がせ私を見ようとしない。
不思議に思うと同時怪訝にも思ったが、ふと視線ゆやった清水くんの横顔がほんのり赤いから。
突っ込むなんて趣味の悪いことはせず、黙って私も両手を差し出す。
「昨日、友達の店で見つけて…うん。」
自信なさ気に言葉を濁す清水くん。小さく堅い何かが、私の掌に落ちてきた。
離れていく清水くんの手。何だ、と自分の掌の上にのるものを確認して私は隣に座る頬の赤い顔に問い掛ける。
「…これ、私に?」
「うん。」
「……スミレの、ピアスだ。」
そっとそれを摘み、自分の目の前まで持ってくる。薄紫色の石がスミレの花の形に削られていて。一枚の花弁だけ桃色になっている。
私が持っていないようなデザインのピアスに、自然と頬が緩む。