囚われジョーカー【完】




やっとのことで離れた唇から、私は息を貪るように吸い込む。



「菫、聞け。」

「…は、あ、はあ、」

「俺の傍からいなくなるのは、許さない。」

「ッ、」

「菫、俺を信じろ。」




この人は、何を言いたいんだ。この場に及んでまだそんなことを言うのか。私は、貴方が別の女性に向ける顔を見ているというのに。


やめて、やめて、



これ以上は、私は、





「何を、信じろって言うんですか…!」


もしかして1番になれる日が来るかもなんて馬鹿げた夢を、貴方の言動に一々抱いて私は何度裏切られたか。



信じろなんて言葉、もっと早くに言って欲しかった。




三浦さんは、苛立っているのか溜め息を吐き盛大に舌打ちをすると。

自分のネクタイを荒々しく緩めて取ると、



「今日はもう、俺の顔見ないで。」

「何、…っ!?」



そんな言葉と同時、そのネクタイで私の視界を奪った。頭の後ろで器用に結ばれたそれ。

視界を失い、私は悲鳴じみた声を上げるが大きな手により口まで塞がれた。





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