囚われジョーカー【完】
神経を尖らせる私。急に足裏が地面から離れ当然怖い。
腰に回る腕により、三浦さんに抱き上げられたということが分かったが。
この男、なんてことをするんだ。
手は自由。目を覆い隠すネクタイを取ろうとすれば「手まで縛りたくないから大人しくして」と。
何て物騒なことを言うんだろうか。鬼畜。
それから、耳に届く音を上げていけば。
ゆったりとした靴音、金属のぶつかり合う音、開鍵音、ドアの閉まる音、さっきまでとは違う床を歩く音、部屋のドアを開ける音、そして
――――ギシリ
私の体が、柔らかく上質な何かに沈む音。
それが何かなんて、視界が奪われていても簡単に察知することが出来た。
「三浦さん…!」
「菫、忘れろ。」
「はあ…!?」
「…忘れろよ。お前が見たこと、今は忘れてくれ。」
「……。」
声しか聞こえない。
その声が泣きそうだから私の混乱はさらに悪化する。