囚われジョーカー【完】
━escape━
「しーのっみや!」
大学、お昼休み。
今まで一人だった文学部側の庭のベンチには、当たり前のように清水くんがいた。
今日は意外に控えめな、黒のパーカーにカーキ色のチノパンという服装だ。いつも鮮やかな色の彼だけに、何だか新鮮味を感じた。
「隣いーい?」
「どうぞ。」
そっとベンチのスペースを半分空ければ、嬉しそうに笑い腰掛ける清水くん。
「今日は本読んでないんだ?」
「…そうだね、何か、気分じゃなくて。」
「そうなんだ?」
清水くんは、小首を傾げて見せるが大して気にかけていない様子。内心ホッとしたがそこはポーカーフェイス。
今日はカツサンドにかじりつく清水くんを横目で見ていると、その目もゆったりと私へと落ちてくる。
瞬間、当然ながら視線はかち合う。
「うわ、照れるじゃん!」
「……ごめん。」
「いや別に、謝んなくてもいいんだけどな。」