囚われジョーカー【完】
お風呂に入っていても、ベッドに潜り毛布を頭まで被ってキツく目を閉じてみても、あの男の言葉が無遠慮に私の脳を占拠してくる。
――――麻乃との仲、邪魔しないでねー。
それは、三浦さんの兄弟としての忠告か。
兄弟の恋人との仲を一般の女子大生には壊させないと言うことか。
…嗚呼、まあ、当然か。
三浦さんの働く会社に就職するには頭がいる。あそこで働くのはエリートばかりだと聞く。
そんな所で働く、しかも社長息子と只の女子大生が付き合うなんて。家族からすれば邪魔者だろう。
付き合うなら絶対、社内のエリートの人の方がいいに決まってる。
「…親切な、人だな…。」
ぼそり、こぼした言葉。
私が三浦さんの傍にいてもいいなんて考え、スッパリと切り捨ててくれた。
目尻を流れ落ちたものを服の袖で拭い、私は無理矢理意識を睡魔へと手渡した。