囚われジョーカー【完】
バイト開始前に、淹れていた分の珈琲がまだ珈琲メーカーに残っているからそれでいいか。
二人分のカップを小さな食器棚から取り出して珈琲を注ぐ。
一つを明日香さんに手渡し、自分も机を挟み向き合う形でパイプ椅子に腰掛けた。
キ、とパイプ椅子特有の軋む音がお尻から全身に響き不快感を煽った。私、パイプ椅子苦手なんだけどな。
まあ、そんな不満を叔父さんにぶつけたって意味ないし。そんな子供じゃないんだから言わないけれど。
静かに香ばしい香りのする珈琲をのんでいれば、明日香さんに名前を呼ばれ顔を上げる。
「はい?」
「清水ちゃんさ、大丈夫かなあー…。」
「……そう、ですね。」
明日香さんは物憂く独白に近い様子でそい問いかけてきた。
心配してるんだな、と仲間思いな明日香さんの気持ちが伝わってくる。
そう、今日のバイト。
清水くんが熱を出して休んでいるのだ。