囚われジョーカー【完】
誰だ、と脳を働かせても思い当たる節はない。いや、一つあるかも。
もしかして、と胸が高鳴る気持ちを抑えて叔父さんに分かったと頷く。叔父さんが部屋のドアを閉めたのを確認して、明日香さんに視線を戻す。
「すみません、ちょっと出てきます。」
「了解。じゃあ、また今度清水ちゃん労ってあげて。」
「分かりました。」
小さく頭を下げ、脱ぎかけだったシャツのボタンをまた上まで留める。
叔父さんの後を追うように急いでスタッフルームを後にして、ホールに戻れば。叔父さんが小さく耳打ちしてくる。
「あそこ、一番右端のテーブルに座る人。」
言われたとおり、右端のテーブルへと視線を流す。
ブラックのスーツを着こなしてはいるが、無造作にセットされた髪はなんだかミスマッチ。
ある意味、期待外れではないその人物は私に気付くとニンマリと笑った。