囚われジョーカー【完】



と。

私がインターホンを押す前に勝手に開くドア。


え?と体をずらせば、顔を覗かせ綺麗に微笑む姿があった。




「丁度だったね。初めまして、菫ちゃん。」

「…初めまして。」



私の名を呼ぶアサノさんは、私が菫と確信しているようで。華奢な手で私の手首を掴むと部屋の中へ招き入れた。


私の腕を引いたまま、慣れた足取りで部屋の奥へと向かうアサノさんは何故か上機嫌で。




そのままリビングのソファーへ誘導される。促されたまま座ると私の隣にアサノさんも腰掛ける。



「初めまして、麻乃と言います。」

「…初めまして。」

「麻酔とかの麻に、乃ちの乃って字で麻乃。菫ちゃんには、謝りたいことがあって…。」



謝りたいこと?と麻乃さんの言葉を復唱した私に、首を縦に振った彼女は柔和な表情を引き締めた。




< 261 / 393 >

この作品をシェア

pagetop