囚われジョーカー【完】
と。
私がインターホンを押す前に勝手に開くドア。
え?と体をずらせば、顔を覗かせ綺麗に微笑む姿があった。
「丁度だったね。初めまして、菫ちゃん。」
「…初めまして。」
私の名を呼ぶアサノさんは、私が菫と確信しているようで。華奢な手で私の手首を掴むと部屋の中へ招き入れた。
私の腕を引いたまま、慣れた足取りで部屋の奥へと向かうアサノさんは何故か上機嫌で。
そのままリビングのソファーへ誘導される。促されたまま座ると私の隣にアサノさんも腰掛ける。
「初めまして、麻乃と言います。」
「…初めまして。」
「麻酔とかの麻に、乃ちの乃って字で麻乃。菫ちゃんには、謝りたいことがあって…。」
謝りたいこと?と麻乃さんの言葉を復唱した私に、首を縦に振った彼女は柔和な表情を引き締めた。