囚われジョーカー【完】



「またね、菫ちゃん。」

「春海さんとお幸せに。」



また、という再会のある別れを告げたカズヤさんに次いで麻乃さんが柔和な笑みを浮かべた。


バタリ、玄関に続く廊下とリビングを区切るドアの向こうに2人は姿を消した。




室内に再び訪れる静粛。三浦さんはまだ後ろから私を抱き締めたままで、離す様子もない。


そっとお腹の前で交差する腕に自分の手を重ねる。



「…直談判って…」

「和也、見合いしろって言われてんだよ。だから彼女いるから嫌だって親父に頼みに行ってんだ。」



――――それは、つまり政略結婚というやつで。今時そんなことが本当にあるんだと思う。


そこで気付いたのは、次期社長だからという重たい責任。




三浦さんは、社長にはならない。だからお見合いをしなくてもいいけどカズヤさんは違う。




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