囚われジョーカー【完】
―――きっと彼は、麻乃さんを守るためにこれから゙会社゙という責任の重さと戦うのだろう。
だって、あの目は、あの優しさが溢れそうな澄んだ目は、麻乃さんにしか向けないから。
いや、彼は麻乃さんしか愛さないともう胸に誓っているのだろう。
麻乃さんはきっと自分が辛い思いをすることを分かっているのに、カズヤさんの傍に寄り添い逃げるなんて考えは微塵も感じさせなかった。
私には、持てなかった思い。麻乃さんを妬んだ自分が馬鹿みたいだ。
三浦さんの優しさを素直に受け取れずに、自分勝手に逃げた私は最低だ。
と。
背中から三浦さんの温もりが消える。
条件反射と言うのか、三浦さんがいなくなる感覚を覚えて勢い良く振り返れば、唇にのる熱。
「っ、」
触れるだけの口付けはほんのり煙草の味がして、頬を撫でるブラウンの髪からはシトラス。