囚われジョーカー【完】
はあ。
口から漏れ出るのは重たい溜め息。
悲劇のヒロインぶんな、私。こうなってしまったのは、今の今まで自分に嘘をついていた私自身の責任なんだから。
涙なんて、以ての外だ。
「…ね、菫ちゃん。」
ポン、と肩を叩かれ名前を呼ばれた。自然と俯いて爪先を映していた視線の糸を持ち上げていけば、柔和な笑顔が広がった。
明日香さんは、ブラウンの頭をこてんと傾け私の顔を覗き込んできた。
「…明日香さん、」
「ん?」
「……私の好きな人、三浦春海さんっていうんです。」
「…そっか。いや、うん、実はさ知ってた。」
…………え?
パチパチと瞬きを繰り返す私。眉尻を下げ、少し気まずそうな笑みを見せた彼女は今「知ってた」と言ったのか?
声に出して明日香さんの言葉を復唱すれば、後頭部をかきながら小さく頷く彼女。