囚われジョーカー【完】
和也さんの部屋は至ってシンプルで、だけどその中にあるダイニングテーブルの上の色違いのマグカップが酷く羨ましいと思った。
多分、私が言えば春海だってそうしてくれるだろうと思うけど。絶対怪訝な顔されるのは目に見えていた。
だって、普段からお願いなんて可愛いことはしない私が、だ。
いきなり「マグカップお揃いにしませんか?」なんて、恥ずかしくて言えるわけがない。
だから、この日常風景として違和感なしに溶け込んだそれが羨ましいのだ。
「菫ちゃーん、コッチ来て。」
「あ、はい。」
麻乃さんに呼ばれ、促されるままソファーに浅く腰掛ける。
座り心地が良いそれは、高く上質なものとすぐ分かった。三浦兄弟は、やはり持っている物が違う。
なんて考えていれば、麻乃さんも私の隣に腰掛け机にバサバサと紙袋の中に入っていた物を広げていった。