囚われジョーカー【完】
「私だって、春海以外いらない。」
「…当然。俺の檻は菫だから。」
―――お互い、囚われ合うのも幸せじゃない?
そう囁き悪戯に微笑んだ春海が愛しくて愛しくて、胸がきゅうっと締め付けられた。
御両親は、ボーイさんに料理を注文していてこちらを見ていない。
……今しかない、こんな大胆なことをするチャンスは。
だって普段から私は積極的なタイプじゃないから、今しかこんな恥ずかしいこと自分から出来ない。
くいっと春海のネクタイを引っ張って、不意打ちに唇を下から重ねた。
酷く驚いたように目を丸くして私を見下ろす春海に、小さく笑って。
「そういう幸せの方が、飽きません。」
「…言うじゃん。」
ふ、と口角を引き上げいつも通りの笑みを浮かべた春海。
幸せってやつは案外
平凡すぎるのは物足りない
ちょっとくらい
泣いて、悩んで、囚われ合って
普通じゃない方が
私達には合っているのだろう。
さあ、
―――――2人の生活を、始めていこうか。