囚われジョーカー【完】
━innocence━
お人好しって、損な人生だと思う。
諦めてばかりで、本気で好きになった子も結局は彼女が幸せならと手を引いてしまう。
今まで、強引に何かを手にしたことなんて一度もない。
「…はあー…。」
「ちょ、清水ちゃん溜め息何回目!空気が重たい!!」
「…瀬尾ちゃん、大目に見て…」
「無理。陵ちゃんタスケテー。」
「…明日香、呑みに誘ったんなら話くらい聞いてやれ。」
ガヤガヤと混み合う店内で、カウンター席にうなだれる俺はしたたかに酔っていた。
――――バイト終わり、店を出た俺は丁度道を通りかかった瀬尾ちゃんと陵一さん(と言うよりは主に瀬尾ちゃん)に連行されて居酒屋に来ていた。
瀬尾ちゃんの酒のピッチに着いて行ったのが間違いだった。
俺の視界はぼやけ初めていて、全身が火照ったように熱い。
隣から聞こえる、瀬尾ちゃんと陵一さんの会話もどこか非現実的となって聞こえてしまう。
嗚呼、飲み過ぎた。