囚われジョーカー【完】
再度、盛大に溜め息を吐き出して琥珀色の液体が揺れるジョッキグラスに手を伸ばす、が。
もう止めとけと優しい声で静止を計った陵一さんによって、その手は宙を掴むだけに終わった。
あーくそ。酔いつぶれることも出来ないのかよ。
三浦グループの跡取りと、なんて。出来過ぎた話だと思うし、篠宮も所詮金目当てだったのかよ。
……いや、駄目だ。
今のは俺の単なる八つ当たりと嫉妬だ。諦め悪ぃ、身を引いたのは俺じゃんか。今更、格好悪い以外の何物でもない。
と。
先ほどまで黙ってグラスを傾けていた瀬尾ちゃんが、俺の頭を撫でた。
この人は、人の心の傷を抉るのが得意だ。