囚われジョーカー【完】
「コレ着て下さい。」
「…なに?」
「コートです、叔父の忘れ物ですけど…」
「……。」
差し出す黒色のコートを凝視する三浦さん。一応クリーニングしてますからと眉を寄せた私を見るなり。
「ぶはっ…!」
「(吹き出した?)」
そう、盛大に吹き出しやがったのだ。
何ソレ、私今なにも面白いこと言ってないよね?すっごい腹立つんですけど。さらに眉間に深いしわを刻んだ私の手から三浦さんはコートを受け取る。
「ああ、コートがどうとかじゃねえから。」
「…、」
「お前、コレ取りに行ってくれたんだ?」
だから何だと首を傾げると、三浦さんは頬を緩め目を三日月の形に細めた。
「ありがと。」
その顔があまりにも甘いから、私の頬が紅潮し始める。