囚われジョーカー【完】
時刻は7時過ぎ。私の部屋からクリーニング屋までは徒歩で15分位だし、講義までまだ時間は余るほどある。
とぼとぼとした足取りで、足を進めていく。
と。
「あれ、篠宮ー?」
辺りはまだ閑静な住宅街。人が溢れお洒落な店が建ち並ぶ大通りの方が似合いそうな、そんな声が響いた。
ゆっくり振り返り、視界に捉えた声の主は想像していたのと同じ屈託ない笑顔を浮かべ私に手を振っていた。
……どうして彼がこんな所にいるんだろう?
少し首を傾げながら、足を止めた。私の元へ駆け寄ってくるのは、そう、清水くん。
今日はジーンズにサイズが大きいのか、はたまた彼が痩せているだけか。黒のセーターをお洒落に着こなしていた。