囚われジョーカー【完】
ニカッと笑ってそう言った明日香さんを恨めしげに見下ろしながら。
「泊まり込みで俺パシられたからね。」
「はあ?だからあんたがうるさいからバイト料あげたでしょーが!」
その大変さを訴えかけるように、私へと熱視線を送ってくる清水くん。それにすかさず明日香さんがツッコミを入れる。
そんなやりとりは、バイト先の喫茶店ではお馴染みだったはずなのに。
明日香さんが辞めてしまった今、こうして見るのが懐かしかったりする。
「菫ちゃん、どこか行くの?」
「…あ、ちょっとクリーニング屋に。」
過去の記憶を遡っていると、不意に声をかけられ弾けたように答えを返した。
「そっか」と笑う明日香さん。不審に思われることはなかったみたいだ。