囚われジョーカー【完】
「…菫。」
「……、」
「菫。」
「…はい。」
「お帰り、願って?」
少し首を傾げて甘えるような口振りでお願いしてくる三浦さん。
コートのポケットから煙草を取り出すと、一本口にくわえて火をつける。
瞬間、紫煙の濃い香りが鼻腔をくすぐり私の判断力を鈍らせる。
嗚呼、もう……。
私の虚勢なんて所詮はただの意地の固まりでしかない。2歳という年の差は、大き過ぎるのだ。
結局は、逆らいきることなんて出来るはずがない。
だって、今、三浦さんがここにいる理由を早く聞きたくて仕方ない。
煙草を持つ手で隠すように歪めた口元が、声に出さず「すみれ」と私の名を刻んだ。
―――――こんなん、誘導尋問みたいなものだと思う。
「…ごめん清水くん、また、明日…。」
「……篠宮、」
「ごめん。」