囚われジョーカー【完】
「……最低、ですね。」
「……あー…。」
口から出た言葉は唐突すぎるものだけど。玄関先での行為のことを言っているのだと、直ぐに三浦さんも気付いた様子。
笑みを消して、若干困ったように眉根を寄せた。
こっちはその仕草にさえ淡い期待を持って、毎度の如く砕かれるんだ。
三浦さんに、こんな気持ち分かりっこないだろう。彼は私の気持ちを簡単に見透かしているのかもしれないけど、私は違う。
「……三浦さんが、見えない。」
「…菫?」
「……。」
―――――しまった。
そう思った時は既に遅く最後まで口に出してしまった言葉を消し去ることは不可能。油断した。
じわり、冷や汗のようなものと一緒になって目頭に込み上げてくる熱いものは気のせいか。
気付かないフリを貫き三浦さんの瞳から逃げるよう「何でもない」と呟いた。