接吻ーkissー
問いつめるようなマネをしなかったのは確かだ。

由良の昔の傷をえぐり返すようなことを私にはできない。

けど、私の中には気持ち悪いものが渦巻いていた。

由良が私に隠していた秘密――そりゃ、簡単に言える訳ないよね。

自分がレイプされていたなんて。

私だったら、死んでも…いや、死んだとしても言えない。

秘密を聞いた後の由良との関係が不自然になっていたのは、自分でもよくわかった。

でも、私は気づかないふりをした。

その方が由良もつらくないと思ったからだ。

けど、そんな私の変化に由良自身が1番わかっていたかも知れない。
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