接吻ーkissー
由良が冷たい目で私を見下ろしている。

「――別れて」

私と目があうと、由良が言った。

「彼氏と別れて!」

由良に怒鳴られ、ビクッと私の躰が震えた。

噛まれた首筋が痛い。

「本当は、もっとひどいことをしたかった。

でも、それじゃあ…」

涙で湿った頬に当たる冷たい空気が、さらに冷たかった。

「璃音がかわいそうだから」


家に帰ると、ドアの間に何かが挟んであることに気づいた。

「――不在届け…?」

宅配便の不在届けだった。
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