接吻ーkissー
もっと深く、彼を知りたい。

もっと彼に魅せられたい。

竜之さんが奏でるピアノの音色を聞きながら、そんな欲張りなことを思ってしまった。

私、こんなにも欲張りだったんだな。

自分でも気づかなかったこの性格に、私は静かに笑った。

あなたに出会ってからの私は、こんなのばっかりだ。


「――音、璃音!」

その声に視線を向けると、竜之さんが目の前に立っていた。

もう終わってしまったのかと、私は思った。

周りに視線を向けて見ると、この場にいるのは私たちしかいなかった。
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