接吻ーkissー
悲しそうで、何かを失うのが怖いって言うような顔を竜之さんは浮かべている。

竜之さん、どうしてそんな顔をしているのですか?

嬉しいなら嬉しいで、もっと喜べばいいのに。

そう思っていたら、
「すまん、少し弾いてきてもいいか?」

竜之さんが言った。

「――え、ええ…」

私が返事したことを確認すると、竜之さんは椅子から腰をあげた。

そして、ピアノが置いてあるステージへと足を向かわせた。

竜之さん、どうしたんだろう?

「璃音ちゃんを置いて海外へ行くのが、嫌なんじゃないのかな?」

えっ?

そう言ったシンさんの視線は、ステージにいる竜之さんに向けられていた。
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