接吻ーkissー
テレビのCМで聞いたことがあった曲だ。

シンと、躰に繊細な音色が染み入った。

――璃音

それはまるで菊地さんが私の名前を呼ぶみたいに気持ちよく、私の躰の中へと入って行く。

ゆっくりと、少しずつゆっくりと…そして、魅せられる。

ゆっくりと菊地さんに、魅せられて行く。

ピアノと向きあっている彼の横顔は、誰かを優しく見つめているような気がした。

彼の視界の中に、入りたい。

彼をもっと知りたい。

もっと、もっと、もっと――。
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