接吻ーkissー
音色が止んだ。

ああ、もう終わったんだな。

パチパチパチ

その音に視線を向けると、お兄さんが拍手をしていた。

私も菊地さんに拍手を送る。

あまりにもキレイな演奏に、拍手を忘れてしまっていた。

「ドビュッシーの『月の光』って言う曲だ。

どうだった?」

菊地さんがカウンターに歩み寄りながら、私に話しかけてきた。

「とてもキレイで、その…」

何て言えばいいのか、よくわからなかった。

「ハハ、それくらいで充分だ」

菊地さんが私の隣に腰を下ろした。
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