シンデレラルーム 702号室
俺が詩織と出逢ったのは、ちょうど2年前──
あの日は珍しく少し肌寒い、しとしとと雨が降る梅雨の日だった。
すみれ色の傘から顔を覗かせた詩織は
ストレートの黒髪に透き通るような白い肌、大きな瞳をしていて、とても綺麗な女だった。
だが、その瞳は悲しみに濡れていて……
繊細で儚くて、俺みたいなガサツな男が触れたらいとも簡単に壊れてしまいそうな雰囲気を纏っていた。
詩織を見付けた瞬間に、彼女の心にはきっと暗い影を落としている“何か”がある──
そう直感して、声を掛けたのだった。
まさかその女に溺れてしまうことになるなんて──
この時は夢にも思わずに。