シンデレラルーム 702号室
雨が降る前からそうしていたのだろう、傘をさしている彼女の周りだけ円を描くように乾いていた。


しかし、スカートから伸びた白く細い足は傘に覆われず、びっしょりと濡れてしまっている。


それでもじっとしたまま微動だにしない彼女だけが、このせわしい世界から浮いてしまっているようで……


──綺麗だ。


伏し目がちにどこかを見つめる物憂げな表情も、魅力的で惹かれる。


彼女は雨が似合うとさえ思えた。



不謹慎かもしれないが、これが詩織の第一印象。


俺はそんな彼女の引力に引き付けられるように、自然と足がそちらに向かっていた。



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