シンデレラルーム 702号室
ぶっきらぼうにしか出来ない俺は言葉より態度で示そうと、自分の上着を脱いで彼女の膝にかけてやった。


「あ…大丈夫です!こんな…」


「いいから掛けとけ」


「…ありがとうございます…」



戸惑いながらも彼女は小さくお辞儀をして、膝に掛かった黒いスーツのジャケットにそっと手を置いた。



そして、彼女の脇にもう一本の黒い傘が寄りかかっていることに気付く。



「…傘、何で二本持ってるんだ?」


何気なく尋ねると、彼女は一瞬にして表情を曇らせる。



「……それは……」


か細い声で呟くと、すみれ色の傘で顔を隠すようにして俯いた。


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