シンデレラルーム 702号室
それからしばらく無言が続いた。


彼女の心の闇を作り出しているのは、きっとこの黒い傘が関係しているのだということは明白だった。



彼女をデリヘルで働かそうだとか、どうこうしようなんて考えは皆無で──


……ただ、今にも泣き出しそうな彼女を救ってやりたい。


それだけの想いが、俺にはあった。



「何か話したいなら聞くぞ」


「………」


「話したくないなら帰りな。いつまでもこうしてたって仕方ない」



彼女はゆっくり顔を上げてすがるような目で俺を見てきたが、

やはり口に出すのは躊躇うようで、静かに降る雨の音だけが二人の間に響いていた。


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