シンデレラルーム 702号室
「富永さん!」


旦那を呼び止めて社内から出てきた女性の甲高い声によって、詩織はそれ以上足が動かなくなった。



詩織よりも若く、タイプも全く違うギャルのような女性。


その女は旦那に傘を手渡すと、キョロキョロと辺りを見回し

誰もいないことを確認すると──



旦那の唇に、軽くキスをした。



悪戯な笑みを浮かべる女と、動揺しながらもどこか嬉しそうな自分の愛する男──…


まるでドラマでも見ているかのように、今目の前で起きた光景が現実とは思えなかったという。



恨めしいほど見事に重なってしまったタイミング。


これは詩織に用意された

禁断の愛に溺れゆくシナリオの序章──



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