シンデレラルーム 702号室

詩織が放心状態のままあの場所に座っていた理由は、旦那の浮気現場を目撃してしまったためだった。



「なんとなく気付いてたんです…あの人が私に何か隠してることは」



会社の事務所に場所を移して、貸してやったタオルで濡れた脚をゆっくり拭きながら

詩織は視線を落としたまま、相変わらず小さな声で言った。



「昔は何でも話してくれてたのに、最近じゃ一日の出来事どころか会話自体なくなってました…。

帰るのが遅い日も多かったし、夜だって……」


「…抱かれてないのか?」


「──っ…!!」



直球過ぎただろうか、

詩織は一瞬目を見開いてから頬をほんのり紅く染め、目を泳がせて俯いた。


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