シンデレラルーム 702号室
その様子から、俺が言ったことは正しいのだろうと確信した。


そして、顔を真っ赤にして小さくなっている彼女が、堪らなく愛らしく想えた。



「俺は結婚なんてものに興味がないから分からないが……」



煙草の煙が向かい合っている彼女に届かないよう、真横を向いて息を吐き出した。


そして、彼女の顔を真正面から見つめて言う。



「あんたには“妻”って立派な肩書きがあるだろう。戸籍の繋がりは何よりも強いんだ」



終始俯いていた彼女がゆっくり顔を上げて、

その大きくて綺麗な漆黒の瞳に、俺という彼女と何もかも正反対な生き物を映し出す。


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