シンデレラルーム 702号室
詩織を見送った後、俺はホテルの事務所で勝手に入り浸っていた。
座り心地の良い椅子にどっしり腰を下ろして煙草をふかす。
「…ここは禁煙ですよ、加川さん」
こんな梅雨時でも涼しげな顔と態度で俺を見やる、松永 楓。
どこぞのモデルかと思うような、整い過ぎた容姿を持つ色男だ。
「堅いこと言うなよ。そんな優等生じゃねぇだろ、お前は」
「優等生じゃないけど一応社長ですから」
「こういう時だけ社長ヅラするなよ…」
問題児だったくせにずいぶんと偉くなったもんだ…と、昔の楓を思い返して苦笑いする。
楓は俺が世話になった組長の息子だから、昔からよく知っているのだ。
姿形は全く違うが、色々とやらかした過去は俺とさほど大差ないんじゃないか?と思う。