シンデレラルーム 702号室
「加川さんもやることやってたんですね」


意外だとでも言うような口調で、二人分のコーヒーを用意しながら楓は言う。


俺なんかが言ったら厭らしく聞こえそうなセリフも、コイツが言うとさらっと聞き流せるから不思議だ。



「そりゃ俺も男だからな。泥沼恋愛だってするさ」


「泥沼なのかよ……」


そう言って楓は呆れたように笑った。



「お前は嫁さん悲しませるようなことはするなよ」



嫁さん=莉子 は俺の会社の元社員で、結構可愛がってやっていた子だ。


歳が離れ過ぎていたために、娘がいたらこんな感じだろうか…と思いながら接していたことを思い出す。


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