シンデレラルーム 702号室
詩織はその大きな目を見開いて、じわりと涙を滲ませた。


「どうして泣くんだ…」



別れを切り出すのはお前の方だろう?


泣くなよ。


その綺麗でいとおしい瞳で俺を見つめないでくれ。


滅茶苦茶に壊してしまいたくなる──



「つまらない話は後回しだ」


俺は再び、詩織の柔らかな唇に自身のそれを押し付けた。



今はこの体の奥から沸き上がる熱と、欲望と、愛情を

お前にぶつけさせてくれよ。



お前の中に、少しでも俺が残るように


最後にもう一度だけ──


お前を思い切り抱きしめたい。




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