あやとり
羨ましそうに眺めながらも、千春の視線はまず車のランク付けをしているよう。
次に車の中にいる人の顔を見ようと必死だ。
もちろん千春が心の中で(なんだぁ)って思うような男なら、こんなところで待ってもらったりはしない。
千春が心から羨ましがるような、そのくらいの容姿と車の持ち主である直哉にだからこそ、ここで待ってもらうことにしたのだから。
友人が見せる羨望の眼差しは、虚栄心を刺激してくれる。
そんなことで自分が千春よりもいい女のように感じているのだから単純だなぁ私も、と思う。
「じゃあ、また明日ね」
胸のうちでは何を考えているのかわからないのが、人間というものだ。
だからこそ人は思わぬ犯罪の犠牲者となってしまうことがあるのだろう。
千春に今の私の胸のうちが分かっているのだろうか。
それは私が直哉の助手席に乗った後の、彼女の表情で見えてくるかもしれない。
「うん、明日ね」
右手を左右に振って見せた千春は、私が車に乗る姿を見る前に後ろに振り返り、後方から歩いてきた同じクラスの女子に駆け寄っていった。
内心、(ちぇっ)と思う。